■巻頭言 『人の心に火を灯す人』 WMC 代表 渡辺雅文
社会人として働くようになってから、心底尊敬できる上司や経営者と出会ったことで、その人の人生が変わるということはよくあることです。
また、素晴らしい先生に巡り合うことができず、つまらない学生生活を送っていた生徒が、新しく赴任してきた先生と出会い、学ぶことの楽しさを覚えたり、部活動にのめり込むようになってハツラツとした学生生活を送り、人間的に成長するきっかけとなることもあります。
テレビドラマ「スクールウォーズ」のモデルとなった京都市の伏見工業高校(現 京都市立京都工学院高校)ラグビー部の山口良治先生(監督)とラグビー部員との出会いは、まさにそのいい例です。この中から、あの“ミスターラグビー”といわれた平尾誠二が育ったのです。
他にも、会社の経営者や上司とウマが合わず、何度も転職を繰り返してきた人が、新しく入った会社の経営者や上司の考え方や生きる姿勢に共鳴して、前向きな生き方や働き方をするようになり、その人の人生が好転するということもあります。
経営者や上司には、学校の先生と同じように「教育者」としての尊い役割があるように思います。「あの経営者(上司)と出会うことがなかったら、今の自分はない」「あの経営者(上司)と出会えてよかった」と思われるだけでも、「教育者」としての尊い役割を果たしているのではないでしょうか。
善師から「教育を衣食住(生活)のためにする人を教員といい、知識や技術を授けることを任務とする人を教師といい、児童や生徒の心に火を灯す人、これを教育者という」と教えていただきました。経営者や上司が社員の心に火を灯すことができるのであれば、それは「教育者」としての役割を果たしていると言っていいでしょう。
今の日本は、国家の再生、企業(組織)の再生、学校や家庭、地域の再生において、「真の教育」のあり方が問われています。国家百年の大計の礎は「教育」だと思います。私自身も、人の心に火を灯す人になれるよう、自分磨きに取り組んでまいりたいと思っています。
(季刊誌「かけはし・巻頭言」は、春・夏・秋・冬の年4回発行しています)